ハワイで見られる三種類のグアヴァ。コモングアヴァ(左)、ストローベリーグアヴァ(中)、イェローグアヴァ(右)
今ジャングルハイキングツアーでは、グアヴァの実を踏まずに歩くことができないくらい沢山のグアヴァが地面に落ちています。グアヴァの甘い香りをかぎながらのツアーです。時々グシャッと踏んで滑りそうになる時もあります。もちろんグアヴァ食べ放題です。
ハワイには三種類のグアヴァ(和名:バンジロウ)があります。外見がレモンに似ているのが一般的なコモングアヴァ(Psidium guajava)、赤い小型のストロベリーグアヴァ(Psidium cattleianum)、そして黄色い長円型のグアヴァ(Psidium cattleianum f. lucidum)です。
コモングアヴァの花
グアヴァはハワイ原産のものだと思う地元の人も多いですが、実はグアヴァは外来種です。(他国との接触が始まった1778年以降、人間の手によってハワイにもたらされたものを外来種と言います。)グアヴァは熱帯アメリカ原産の常緑樹です。 ハワイへの導入は一番古いもので1791年だと記録されている資料もあれば、19世紀はじめにスペイン系の移民ドン・マリン氏が導入したとも伝えられています。(ちなみに彼はパパイヤ、マンゴ、ウチワサボテンをハワイに導入したとも言われています。)いずれにせよグアヴァはハワイでも古い外来種の一つです。
ストローベリーグアヴァ(ストロベリーグアヴァのネーミングについてですが、イチゴの味に似ていることから名づけられています。中南米ではチェリーグアヴァとも呼ばれているそうです。)
グアヴァは10m程成長する木で、樹皮は 濃い赤茶色または薄い茶色で、ところどころ樹皮が剥がれているように見えます。 ストロベリーグアヴァ(ハワイ語でワイアヴィーウラウラ)と黄色い長円型グアヴァ(ハワイ語でワイアヴィー)は一般的 なグアヴァにくらべて、7mぐらいまでしか成長せず、葉は濃い緑色です。これら三種類 のグアヴァの花は大体同じように見えます。よく見ると花はやはり外来種ローズアップ ルとポリネシアン導入種のマウンテンアップルの花に似ていま す。ハワイ固有種のオヒアもグアヴァと同じフトモモ科の仲間です。
黄色い長円形のグアヴァ、イェローグアヴァ
三種類とも帰化植物です。低山で雨がよく降るところによく生えていますので、簡単に見つけることができます。ジュースを作るため一般的なグアヴァは農園でも栽培されています。 グアヴァは様々な利用法があります。もちろん実を食べることができます。グアヴァ は ビタミンC、A、カルシウム、鉄が豊富な栄養たっぷりの果物です。一般的なグアヴァはピンク色の果肉なのに対し、ストロベリーグアヴァと黄色い長円型グアヴァの白い果肉です。三種類とも小さくて固い種がたくさんありますが、食べる際は種ごと口にいれて、種だけ後で出します。ストロベリーグアヴァと黄色い長円型グアヴァは皮ごと食べられますが、普通のグアヴァでもよく熟しているものは皮ごとでも美味しいです。グアヴァを食べ過ぎると便秘になることもありますので気をつけてください。
昔グアヴァの実だけではなく、その木を炭にして、燃料として使われていた時代もありました。この写真では炭を作るための釜が見えています。(ホオマルヒア植物園にて)
グアヴァの実は甘ずっぱい味がします。ワイキキのホテルなどで出されるグアヴァジュースにはかなり砂糖が加えられていますが、ちょうどよく熟したグアヴァは自然な優しい甘さです。 黄色い長円型グアヴァは酸味が少ないです。ストロベリーグアヴァ は独特の酸味と甘さがあります。個人的にはストロベリーグアヴァが一番美味しいと思います。日本でハイキングをした時、よく仲間がレモンのはちみつ漬けを持ってきてくれました。疲れた時に食べると酸味が疲れを取るということで、なかなかいいアイデアだと思いました。ハワイで山を歩きながらグアヴァを木からもいで食べるのも同じ様な効果があります。実がなるのは夏から秋にかけてですが、その前後でもよく探せば見つかることもあります。
ストローベリーグアヴァのジュース。ハワイ島でしか売っていない珍しいジュースです。
グアヴァジュースの作り方は、実をつぶし湯がいてから漉して果汁をしぼります。ハイキングしながら簡単に作ることもできます。よく熟したグアヴァを集め(地面に落ちている実は虫がついていないか要チェック)手で潰し水筒に入れます。(口の広い水筒がいいでしょう。)そこに砂糖を加えてよく振って出来上がりです。バンダナを使って漉してもいいですが、種が気にならなければそのままでも十分美味しいです。
ジュースの次にグアヴァでよく作られるものはグアヴァジャムで す。ハワイのスーパーやお土産店でもよく売られています。グアヴァジュースと同じく、一般的なグアヴァで作られています。私としてはストローベリーグアヴァのジャムが好きなのですが、これは売って いないので自分で作るしかありません。グアヴァにはジャムを固めるペクチンがたくさん含まれていますので作りやすいです。
グアヴァのソースやドレッシングもあります。グアヴァソースはハワイのクッキーや料理にも使われています。我が家ではクリスマスのハムのグレーズ(照りをつけること)には毎年、自家製のストロベリーグアヴァソースを使っています。
グアヴァはハワイ民族薬としても利用しています。葉芽または若葉を噛んで下痢止めにしたり、お茶として飲むと頭痛を和らげる効果もあります。葉と他の薬剤と一 緒に使い怪我、痣、捻挫用の湿布を作ることもあります。
このようにグアヴァは色々利用されていますが、実は問題種でもあります。ハワイではグアヴァのような天敵のいない外来種はすぐに広がってしまい、他の植物を森から締め出してしまいます。導入後、グアヴァは牛、猪、馬、鳥などによって、早いスピード拡大し、沢山の森がグアヴァの森になってきています。人間もグアヴァの種をまき散らしています。前述のようにトレイルを歩きながらグアヴァを食べ、種を色々なところに落としています。仲間のユーカリのようにグアヴァは周りの土に化学変化を起こし、他の植物が生育できないようにしてしまいます。
しかし、これまでグアヴァは何人ものハワイのハイカーの命を救ってもいます。オアフ島では特にそうした事例が多いです。オアフ島はハワイ諸島の中でも 古い島ですので、侵食が進んでおり、そのため尾根が多くあります。数え切れないほどの尾根を歩くハイキングコースがあるということ、ハワイの人口の大部分がオアフ島に集中していることが、オアフ島での山の転落事故が最も多い理由です。そこで、グアヴァですがグアヴァの木は根が強く崖などにもよく根付いています。ですので、ハイカーが 転落した際、グアヴァの木にひっかかって助かったということがよくあるのです。グアヴァのおかげで、あばら骨を折るだけで済んだという人がたくさんいるのです。