ハワイに降る雪 (カイル) |
雪に覆われたマウナロア(ハワイ島)
今年のハワイのクリスマスはホワイトクリスマスでした。といってもハワイ島のマウナロアとマウナケアの話ですが。
ハワイに降る雪、などずいぶん突飛なことを言うと思われるかもしれませんが、ハワイにも雪は降ります。雪が降るのはマウイ島のハレアカラ(3055m)、ハワイ島のマウナロア(4169m)、そして同じくハワイ島のマウナケア(4205m)です。どの山も標高3000mより上から山頂付近の間に降ります。どれぐらいの量の雪が降るかはっきりした数字はありませんが、ハワイ島のマウナロアとマウナケア 山頂付近の年間平均の降水量は355mm~406mmで、そのうちの多くが雪として降るそうです。(マウナロアとマウナケアの場合、よく強い風が吹いているので正確な降水量を計るのは難しいのです。)ハレアカラ山頂付近の年間降水量は1000mmほどですが、標高が低いためそのほとんどは雨です。ハレアカラに降る雪はすぐ解けてしまうことが多いのですが、マウナロアとマウナケアでは冬の間に降った雪の吹き溜まりがよくできます。
衛星写真:上がマウナケア、下がマウナロナ
ハワイ諸島の最高峰であるマウナケアは、ハワイ語で「白い山」を意味します。雪の量もハワイでは最も多いです。ポリアフという雪の女神が宿っているとされ、ネイティブハワイアンにとって聖なる山です。(こうした理由から、現在、山頂に建築予定の天文台に対して開発反対運動が行われています。)マウナケア上部には、何と氷河時代の名残りである永久凍土があり、その凍土から溶けた水をたたえたワイアウ池(標高3968m)の水源となっています。
ワイアウ池のほとり
なぜハワイに雪が降るのか。その答えは単純に「山が高い」からです。たとえ山が赤道直下にあったとしても、その山が4000mほどあれば雪は降ります。1000mあがれば、気温は平均6.5℃下がるので、4000mの山の気温は水位海抜より26℃低くなります。マウナケアとマウナロアの上部気温はよく零下まで下がります。年間の平均気温は、ハレアカラは10℃、マウナロアとマウナケアは6℃です。
ハワイは南方の島というイメージがあります。確かにハワイは日本より南に位置していますが(北緯20 度)、日本と同じ北半球ですので季節は同じです。ハワイの冬は雨季であり、雪がもっともよく降るのは冬です。めったにありませんが、夏にマウナロアとマウナケアで雪が降ることもあります。
マウナケアとマウナロアでは小さなやわらかいヒョウ(雹)のようなもの(英語ではgraupel)がよく降ります。ハワイ各島にはそれぞれ雹が降ったという珍しい記録があります。数年前、オアフ島の一部にゴルフボールほどの大きさのヒョウが降りニュースになりました。雪が降れば、ハワイでもスキーやスノーボードができるのではないかと思いますが、雪のスポーツができるのはマウナケアのみです。ハレアカラは雪があまり残らず、すぐ溶けてしまいます。マウナロアはいまだ活火山(最後の噴火は1984年)で、荒い溶岩大地はあまりスキーとスノーボードに適していません。 また雪がたくさん残る山頂付近へは足でしか登れませんので、大変な高山トレッキングになります。マウナロアの雪を楽しむにはやはり冬山トレッキングになります。
マウナケア上部
マウナケアはマウナロアより古く、火山灰の地面が多く、スキーで滑られる斜面がありますし、なにより山頂のすぐそばまで4輪駆車で行くことができます。マウナケアの山頂付近には各国の天文台があり、研究が行われています。スキーリゾートとして開発されているわけではないので休養施設やリフトといったものはありません。従って自分たちの足でスキーをかつぎ、または車をリフト代わりに往復します。
マウナケアでスノーボード!
年に数回の大雪でマウナケア山頂までの道が一時閉鎖になることがあります。長くても2~3日ですが、 その間、ハワイ唯一の除雪車が大活躍します。道が開通すると地元の人たちが雪遊びをしにマウナケアを目指し、ちょっとした交通渋滞になるほどです。スキー道具やスノーボードを持っていない人は、海で使うボディーボードやプラスチック製のお盆などをソリにして遊びます。雪を集めてトラックに載せ、下界に運んで子供達や友達へのおみやげに持って帰る人もいます。「午前はスキー、午後はサーフィンということができるのはハワイならでは」とよく言われます。
しかしハワイ島に住む年配の方に聞くとマウナケアは昔にくらべて雪の量がずいぶん減ってきたそうです。1970年代には何年も続けてたくさんの雪が降り、雪質もよかったので、スキーがよくできたと聞いています。これも地球温暖化のせいでしょうか?
少し余談になりますが、地球温暖化の研究はMauna Loa Weather Observatory(マウナロアの気象観測所)で 行われています。観測所はマウナロアの奥にあり、マウナロア山頂への登山口のすぐ側です。観測所は1956年に設立されました。標高3400mに位置する観測所周辺では年間6cmほどの雪が降ります。ハワイでの雪山トレッキングに挑戦したい方はどうぞお問い合わせください。日本の山仲間の間で相当な自慢話になりますよ。